東京に戻り、部屋の電気を点けると、実家の雰囲気とは全く違う空間です。
 一人でいることに気楽ささえ感じていたのに、誰の声も聞こえない静かな部屋は、机の上に置く鍵の音さえも大きく聞こえます。
 窓を開けると道路を走る車の音が微かに聞こえ、寂しさを強調するようでした。


 部屋から唯一聞こえる音といえば、扇風機の羽が回る音だけ、私は無性に寂しくなりノートを開いていました。
 ミーコは寝ています。
 時計を見ると、もうすぐ今日が終わる時間帯です。


 そうだよね、もうこんな時間だもんね。
 ミーコの寝顔見ながら、さらに不安が押し寄せます。
 現在開いたページの場所は、すでに半分近くの場所でした。

「もうこんな所まで」

 残されたノートの厚みは、別れの時間を告げているようでした。
 やだなー離れたくないよ。
 涙で視界がぼやけると、どうすることも出来ずに、ゆっくりうずくまっていました。


 私は気づいていました。
 ミーコを守っているつもりでいましたが、今も寂しさから助けてもらっている。
 初めから私の方がミーコに、救われていることを。