私は目を凝らし期待しました。
「ミーコこれ鉛筆じゃない」
 前日に描いた鉛筆が出てきました。 


 手に持っていたスケッチブックは一緒には移動しませんでしたが、なぜか鉛筆は一緒に移動したみたいです。
「ミーコ鉛筆だよ、鉛筆は移動したよ!」
 私は嬉しくなり、興奮気味に言葉をかけました。


 ミーコは鉛筆を拾い、私に見せ笑っています。
 私は喜びの中、不思議に思いました。
 なぜスケッチブックは移動せず鉛筆は一緒に移動したのでしょう?


 それでも私は無性に嬉しくなりました。
 ミーコは洋服のことは忘れ、鉛筆を持ち歩き回って喜んでいます。
 すると、今度はミーコの後ろに隠れるように、スケッチブックが置いてあることに気づきました。

 私は声が出し、スケッチブックを指差しました。
「アッーー」

 ミーコも同じように指差し声を出しています。
「あっーー」


 スケッチブックは移動していました。
「ミーコ開いてみて」
 私は急がせるかのようにそう話すと、ミーコはスケッチブックを開き見始めました。
 当然昨日描いた観覧車が描かれていると思ったのですが、最初のページには東京タワーと私の絵が描かれていました。

 ミーコが初めて描いた絵です。
 ミーコは笑顔で声を出します。
「あっーー」

 そして私の顔を見ていましたが、私は驚きのあまり声が出ませんでした。
 更にミーコがページをめくると、川の絵が出て来ます。
 そのスケッチブックには、ミーコが今まで描いたものが次々と現れます。
 

 そして最後には、昨日描き残した、観覧車の絵が出てきました。
 ミーコはとても喜んでいましたが、私は複雑な気持ちです。
 喜ぶミーコを見て良かったと思う気持ちでいましたが、その感情の中には、不思議な気持ちと、怖いと思う気持ちが入り交じります。

 改めてノートを見て思いました。
 このノートの目的は、一体なんなんだろう?
 どうしてこのような体験を、私にさせるのでしょうか。