その日の夜アパートに戻ってからも、ときおりミーコはスケッチブックを広げ、観覧車の絵を見ています。
 ときには鼻歌を交じえながら、気分良さそうにしています。
 よっぽど気に入ってくれたのかな? そんな考えでいましたが、いつまでも起きているミーコが気になります。

「ミーコもう十一時半だよ。寝る時間とっくに過ぎてるよ」

 私が時計を確認し時刻をつぶやくと、ミーコは不安そうな表情に変わりスケッチブックを抱きしめました。


 その仕草を見て気付くと、胸が締め付けられる思いでした。
 せっかく描いた今までの絵も、翌日には無くなってしまう。
 ミーコは子供ながら考え、一緒に移動させようとしています。
 私の安易な考えで提案した絵を描くことは、結果ミーコを悲しませてしまっていたと知り、自分が嫌になりました。


 でもミーコが触れていたら一緒に移動するのではと期待をした私は、心の中でミーコを悲しませないで欲しいと、図々しくも神様にお願いをしていました。
 今日が終わる時刻になると、ミーコは段々薄くなっていきます。
 目をつむりスケッチブックを持つ手に、ギュっと力を入れています。


 期待をする私の目の前では、消えていくミーコと、浮かぶように残るスケッチブックが目に映りました。
 残念な気持ちの中、私はかける言葉も浮かばないまま、そっとページをめくりました。
 ミーコはうずくまり、声を出さずに泣いていました。


 その状況が目に入ると、痛みにも似た悲しみが押し寄せ、私にとって、もっとも見たくない光景だと認識させます。
 悲しむミーコを何とか喜ばそうと、必死で考えました。
 どうしよう。


 知識のない自分に悩みながらも、頭に浮かんだお菓子やうさぎのぬいぐるみを描いて喜ばそうとしてみたのですが、出来上がった物をミーコに見せると、今度は声を出して泣き始めました。

 駄目だ、どうしたら喜んでもらえるだろう? 数少ない知識の中から浮かび上がったもの、それは幼少期に両親に買ってもらったフリルのついた水着でした。

 そうだ洋服はどうだろう?