杉田さんが差し出した色鉛筆は、外国製のようです。
 木製の木箱に入り、豪華な作りになっていました、
 今まで知っているものとは違い、どこか大人の雰囲気を感じます。
「あ、ありがとうございます」
 

 お礼を言うものの、突然だったこともあり、表情に出して感謝を伝えることが出来ませんでした。
 自分でも失礼だと感じながらも、訂正することなく澄ました表情をしてしまいます。
「いやいや、貰い物なのですから。あっ、そうそう。蓋を開けてみて」
 

 私は言われるまま蓋を開けてみました。
 蓋を開けると同時に、上段部分が上がりながら後ろにスライドします。
 下段目も取りやすいように、細工がしてありました。


「すごい、二段重ねになってる」
 予想していなかった構造に、思わず声が出てしまいました。
「すごいのは見た目だけじゃないんですよ。僕も試しに塗ってみたけど、面白い感覚を味わえると思いますよ」
 私は今度こそ、笑顔でお礼を言おうと意識しましたが、間を割るように、石井さんの声がかかります。
「杉田くんそろそろ行くよ」


 その声色に、浮かれた気持ちは消え去り、少し心臓が縮むようでした。
「これから、お客さんの所で打ち合わせなんだ。それじゃ」
 軽く手を上げ、いそいそと出かけていきました。
 私は残念な気持ちに動揺しないよう装っていましたが、隣にいた森川さんは、そんな気持ちを吹き飛ばす発言をします。