ミーコは私の初めての冗談に笑い、足元をふら付かせながら喜んでいます。
「あっはっはっはっはっ聞こえているよー、だって返事しているもん」
「そうだよね、私、ミーコの呼ぶ声にノート開いていたよね」
 知らず知らずの内に幸せな会話を楽しんでいると、窓の外は雨音から虫の鳴く声に変わり静かな空が訪れていました。


「ミーコ、遅くなっちゃったけど、お部屋の周りにお外の絵を描くね」
 すでに外は夜でしたが私はミーコの居るページに、青空の絵を描きました。
 部屋の外は山の頂上で、周りに策を立て手がとどく距離に白い雲、その雲の隙間から、突き抜けるかのように虹を描きます。


 私の中でミーコとの時間をこれから楽しみたいと思う気持ちが、そんな描写をさせたのだと思います。
 描き上がると、ノートの中では雲がゆっくり風で移動するかのように動き出します。
「面白いノート、私の想像どおりに世界が出来ている」
 窓から見える夜空を見上げ、現実とは違う世界を作り上げたことに喜んでいました。

 
 しばらくすると、突然ミーコは何かに怯えるように周りを気にし始めました。


「きたよ、あれがきたよ」
 ミーコは立ち上がり周りをキョロキョロ、警戒しています。
「どうしたの?」


 私はミーコの慌てている様子を見て、同様に周りに意識を向けてみました。
「ミヨコ、ピーポーピーポー来たよ」
 何故か私に報告し、部屋に逃げるように入って行きました。


 耳をすますと遠くの方から近づいてくる、救急車の音が聞こえてきました。
「ミーコ救急車の音、嫌いなの?」
 その言葉に答えられないほど、救急車のサイレンに動揺しているようでした。


「音が小さくなるみたいだから、ノートを閉じるけどいーい?」
 私の問いかけに目線だけを合わせ無言のまま頷いたので、救急車の音が聞こえなくなるまでノートを閉じていました。
 東京に一人住むようになってから、比較的救急車の音をよく聞きます。
 住宅地だからでしょうか? 大きな道も近くに有るからでしょうか? そう言えば、近所に大きな消防署もあります。


 私は救急車の音に怖がっているミーコのことを思うと、一人にしておくのは、やはり心配です。
 救急車の音が聞こえなくなりノートを開くと、ミーコはまだ警戒しているようでした。