見てみたい。その資料をもっとじっくり見て勉強したい。
そんな私の気持ちとは裏腹に、森川さんは仕事がしやすいように机の上を片付け始めています。
どうしよう。コピーさせて下さいとお願いしてみようかな? 少しずつ決心がつくものの、なかなか声に出すことが出来ません。
声に出そう声に出そうと心で思っていても、勇気を持つことができません。
森川さんも家から持参したと思われる紙袋を取り出すと、資料をしまい始めました。
その行動が目に入ると残念な気持ちと同時に、心にブレーキをかけていました。
駄目だ遅かった。声に出すのはよそう。
先ほどまでの気持ちが一気に冷め、諦めてしまういつもの私が居ました。
そして行動出来なかったことに惨めな気持ちにならないよう、いつものように自分自身に嘘を付き始めます。
仕事が終わった後、本屋さんに寄って帰ればいいなどと、まるで楽しみのように考えました。
美味しそうな料理の本を参考に、ミーコに描いてあげたら喜ぶかな? 森川さんが描いた料理のように、可愛らしいイラストが乗っている本、探せばきっとあるはずだ。
ミーコの喜ぶ顔を想像し、明るい気持ちになろうとしてみましたが、寂しそうな表情しか、浮かぶことはありませんでした。
諦めたことに残念がる、ミーコがいるように思ったからでしょうか?
悲しい顔をさせている。しっかりしなきゃ! ちょっと声に出すだけじゃない。
一瞬そんな言葉が頭をよぎると、勢いをつけた声が出ていました。
「コピーしてもいいですか?」
自分でも想像出来なかった、大きな声が出てしまっています。
仕事の内容以外のことで話しかけている私に、森川さんは驚いた表情です。
私も戸惑いながら、もう一度ちゃんと言おうと言葉に出しました。
「もし宜しければ、森川さんの資料をコピーさせてもらっても……宜しいでしょうか?」
森川さんは私の繰り返す変な言葉に「クッス」っと笑い、笑顔で拒んでいました。
「昔に描いたイラストだし、細かい字でいろいろ書かれているから恥ずかしいわ」
私は、どのような言葉を使えばいいかわからずにいましたが、ただ小さな声を絞り出すのに必死でいました。
「いえ……そんなことは、あの……お願いします」
少しの沈黙の後、私は森川さんの表情を確認するべく顔を上げてみると、森川さんは目を閉じ考えていました。
そして、しばらくすると、照れながらも明るい言葉遣いで承諾してくれます。
「うーーん、うん、いいよ!」
私はその言葉に、心が和らぐようでした。
「ありがとうございます」
お礼を言いながらも嬉しさがこみ上げてしまい、浮かれる自分を押し殺すのに、必死でした。
自分でも表情が緩んでいることがわかるようで、冷静さを装っています。
その日の昼休みに、コピーを撮らせてもらい改めてその資料に目を通すと、どれも素晴らしい内容でした。
絵からすぐに読み取れる調理法の作画は、親切で丁寧に描かれていて、何よりも食材のイラストや出来上がった料理の完成画は、見ているだけで料理を作ってみたい気持ちにさせます。
また、こと細かく描かれた文書には作画への表現方法、どのように意識すれば美味しそうに見えるかなどの注意書きがされ、とても勉強になります。
まるで、絵を描くことの楽しさを刺激される思いでした。
昼休みの残り時間、模写しながら練習していると、頭の中はミーコの喜ぶ顔しか浮かびません。
速く喜ぶ顔が見たい。私は就業時間が終わると急いで帰宅していました。
そんな私の気持ちとは裏腹に、森川さんは仕事がしやすいように机の上を片付け始めています。
どうしよう。コピーさせて下さいとお願いしてみようかな? 少しずつ決心がつくものの、なかなか声に出すことが出来ません。
声に出そう声に出そうと心で思っていても、勇気を持つことができません。
森川さんも家から持参したと思われる紙袋を取り出すと、資料をしまい始めました。
その行動が目に入ると残念な気持ちと同時に、心にブレーキをかけていました。
駄目だ遅かった。声に出すのはよそう。
先ほどまでの気持ちが一気に冷め、諦めてしまういつもの私が居ました。
そして行動出来なかったことに惨めな気持ちにならないよう、いつものように自分自身に嘘を付き始めます。
仕事が終わった後、本屋さんに寄って帰ればいいなどと、まるで楽しみのように考えました。
美味しそうな料理の本を参考に、ミーコに描いてあげたら喜ぶかな? 森川さんが描いた料理のように、可愛らしいイラストが乗っている本、探せばきっとあるはずだ。
ミーコの喜ぶ顔を想像し、明るい気持ちになろうとしてみましたが、寂しそうな表情しか、浮かぶことはありませんでした。
諦めたことに残念がる、ミーコがいるように思ったからでしょうか?
悲しい顔をさせている。しっかりしなきゃ! ちょっと声に出すだけじゃない。
一瞬そんな言葉が頭をよぎると、勢いをつけた声が出ていました。
「コピーしてもいいですか?」
自分でも想像出来なかった、大きな声が出てしまっています。
仕事の内容以外のことで話しかけている私に、森川さんは驚いた表情です。
私も戸惑いながら、もう一度ちゃんと言おうと言葉に出しました。
「もし宜しければ、森川さんの資料をコピーさせてもらっても……宜しいでしょうか?」
森川さんは私の繰り返す変な言葉に「クッス」っと笑い、笑顔で拒んでいました。
「昔に描いたイラストだし、細かい字でいろいろ書かれているから恥ずかしいわ」
私は、どのような言葉を使えばいいかわからずにいましたが、ただ小さな声を絞り出すのに必死でいました。
「いえ……そんなことは、あの……お願いします」
少しの沈黙の後、私は森川さんの表情を確認するべく顔を上げてみると、森川さんは目を閉じ考えていました。
そして、しばらくすると、照れながらも明るい言葉遣いで承諾してくれます。
「うーーん、うん、いいよ!」
私はその言葉に、心が和らぐようでした。
「ありがとうございます」
お礼を言いながらも嬉しさがこみ上げてしまい、浮かれる自分を押し殺すのに、必死でした。
自分でも表情が緩んでいることがわかるようで、冷静さを装っています。
その日の昼休みに、コピーを撮らせてもらい改めてその資料に目を通すと、どれも素晴らしい内容でした。
絵からすぐに読み取れる調理法の作画は、親切で丁寧に描かれていて、何よりも食材のイラストや出来上がった料理の完成画は、見ているだけで料理を作ってみたい気持ちにさせます。
また、こと細かく描かれた文書には作画への表現方法、どのように意識すれば美味しそうに見えるかなどの注意書きがされ、とても勉強になります。
まるで、絵を描くことの楽しさを刺激される思いでした。
昼休みの残り時間、模写しながら練習していると、頭の中はミーコの喜ぶ顔しか浮かびません。
速く喜ぶ顔が見たい。私は就業時間が終わると急いで帰宅していました。