「ミーコ、食事なんだけど、お腹空いた? これ食べれそう?」

 心配になり尋ねると、ゆっくりパンを口にし、笑顔を向け答えてくれます。

「うん、大丈夫。おいしい」

 やはりミーコも、おなじ様に食事をするみたいです。
 私は夕食をカップ麺で済ませると、二人の会話はその後も続きました。


 その日の夜、ミーコが寝るのを見届けると、何故だか両親のことが気になり、実家に電話をかけていました。
 今まで私から、かけることは無かったのですが、不思議と行動的になっています。

 ブーゲンビリアを思い出したからでしょうか?

 描いた絵が動く、ノートの話をしたかったのでしょうか?

 電話がつながり、聞こえてきたのは母の声です。

「はい、田中です」

「お母さん。私、美代子」

「どうしたの? 何かあったの?」

 どうやら母も、私からの電話に驚いています。

「あのね」

 母の声を聞き、先程までの華やかな気持ちは、悲しい気持ちに似たものに変わりました。
 平然と会話をしている自分に、再び自己嫌悪うの気持ちがおとづれます。

「うーんうん、何でもない。ただなんとなく」

 私のことを心配する母の声に「大丈夫。何でもないから」と、誤魔化し冷たい言葉をかけてしまします。
 ただノートに描き残したブーゲンビリアが、子供の頃感じた両親と繋ぐ手の感触を、思い出させていました。