周りの背景を部分的に消し、描き足しながら変化させます。
 中央には大木を描き、日差しがあるかのように木陰を描きました。
 私は風景画には少し自身があったので、スラスラと描き上がると、ミーコは驚き喜んでいます。

 枝を太く描き、厚みのある葉を付けていきます。
 木の根も太く、大木を支えています。

「すごーい」

 ミーコは近くに生えた大きな木を見上げ、時には手のひらで木を叩いています。

 すると、叩いた拍子に葉っぱが一枚、ひらひらと落ちてきました。

「ノートの中が動いている」

 ミーコだけではなくノートの中には、物事が存在しているようです。
 ミーコは、大木を見上げながら周りを歩き回ります。

 根につまずくと転び、時には木に登ろうとして、登れずに諦めていました。
 喜んでいるミーコを見て嬉しくなると、さらにノートの空を変化させ始めました。

「今度は何になると思う?」

 少し勿体振るかのような話し方で、ノートの中の空を鉛筆で塗りつぶしていきます。
 中心の部分は明るく隅の方は濃く色を塗りわけ、ノートの中を日中から、星が輝く夜空に変化させました。

「キレイ!」

 ミーコは笑顔で、両手を広げています。

「綺麗だね」

 そう語りながらも少しづづも夜空を濃く塗りつぶし、星を強調させるように輝かせていきます。


 そうだ、星空って素敵なんだよね。
 当たり前のことを再認識していました。
 ミーコの笑顔を見ながら、少し安心したせいか、私はお腹がすいていることに気付きました。
 
 時計を見ると、十九時を指しています。
 もおこんな時間だ。
 
 多分ミーコもお腹を空かせ、食事をとると思います。
 ノート中央の大木を消し、ミーコがくつろげる部屋を描き足します。
 室内にはテーブル、その上にはパンとスープの食事、そしてソファを描き揃えました。
 
 テーブルは上手く描けたものの、ソファは柔らかさが再現出来ず、不恰好にしか描けません。
 また食事も、何度も描き直す始末です。
 自分の画力のなさに、焦りを感じてしまいます。