うわっ、恥ずかしい。ちょっと失敗しちゃった。

 軽くそんなことを思いながらも彼女を見ると、うつむき黙っています。そしてしばらくの沈黙した後、寂しげな表情を浮かべ話します。

「……わかんない」

 軽率な質問で大失敗です! 
 
 今にも泣きだしそうな声に、私はあわててしまいました。
 寂しげな表情を見ると、可哀想で他の質問も出来なくなってしまいました。
 そしてこの現状を、自身で理解しようとしました。

 このノートは魔法のノートで、私が描いた彼女に、魂のようなものが宿ったのかもしれない。
 そう考えれば、私がこの世に誕生させた絵なのですから、何もわからないのは当然です。
 彼女にとって私はお母さんのような存在だから、安心させるため少しでも明るくしゃべりかけなきゃ。
 
 そんなことを思い始め、彼女を笑顔にすることだけ考えました。
 
 とりあえず、名前を決めなきゃ。

「あのー、もしよかったら、私が名前をつけてもいいですか?」

 その言葉に、うつむいた顔を上げました。

 名前かー、名前なんて今までつけたことないからなー
 花子ちゃん? 幸子ちゃん? 駄目だ。いい名前だけど、何故つけたのか理由がわからない。
 本子ちゃん? ノート子ちゃん? 呼びにくいし、どこまで私はセンスが無いんだろう。

 彼女は私自身でもあるから……

「そうだ、私の一文字、み、よ、こ、のよを取って、ミーコて名前はどうかな?」

 単純な名前ですが、ニックネームみたいでカワイイいと思いました。

「ミーコ?」

 彼女はつぶやき、私を見つめています。
 そして私が今出来ること、絵を描くことで、ノートの中の彼女を喜ばせようと思いました。