絵がしゃべり動いています。
現実離れしたこの出来事でしたが、恐怖感も無く不思議な感覚です。
「あなたはだーれ?」
彼女はなんの警戒心もなく、明るい口調で聞いてきました。
突然聞きたいことを逆に質問されたので、慌ててしまい即座に本名を伝えました。
「た、田中美代子です」
彼女はしばらくの間、び動作もせず、見つめています。
「ふ〜ん、タタナカミヨコ」
……理解するようにつぶやくと、沈黙しています。
私はどうして絵の彼女が動きしゃべれるのか、このノートはいったい何なのか。
聞きたいことが山ほどあったのですが、まず名前から聞こうと考えました。
すると彼女は、何かに気付いたかのように笑顔になり、先に口を開きます。
「ねー何月生まれ?」
次は私の番だと思っていたので、がっかりです。
しかも何故生まれ月なんだろう? 普通年齢では? とも思いました。
でも相手は子供なので、しょうがないかと理解し答えます。
「六月生まれです」
スットンキョウなその質問でしたが、彼女の無邪気な笑顔を見る限り、悪い子ではなさそうです。
今度こそと思い、口を開こうとします。
「ねーねー動物好き?」
また彼女からの、質問です。
出鼻をくじかれるとは、このことでしょうか。
「……うん」
返事をしたものの私も質問をしたいのに、次々と質問してくることに、対抗心のような思いが生まれてしまいます。
そんな彼女を見ていると、何やら部屋の周りを、鼻歌混じりに見渡していました。
その行動に、つられるように後ろを振り返ると、壁にはうさぎの絵が描かれた、カレンダーが目に止まります。
これを見て質問を考えたのかな?
自分から質問をしたくて、目に入ることを聞いてきているようでした。
今度こそ質問しようと口を開くと、その行動を見て慌てて話しました。
「ダメー、ダメー、ダメー、ダメー」
そんな彼女が気になり少しちゅうちょしましたが、私はゆっくり質問をしていました。
「あなたは、なんて名前なの……ですか?」
優しくしゃべりかけるつもりが、変な言葉遣いになってしまいました。