きっと両親も不安にさせないよう、いつも笑顔で接してくれていましたが、アザを常に気にしてくれていたはずです。
 優しさや暖かさをもらい育ててもらったのに、人を避け人となじめない自分を作り上げています。

 私は彼女を見つめ、公園で見た花に、こぼした言葉を思い出していました。

 本当は愛情を感じてみたい、っと。
「情けないな……今の私。充分もらっていたじゃない」

 言葉の後、我慢していた気持ちが緩み、視界がぼやけていました。
 自分でも不思議なぐらい、大粒の涙が溢れ出します。
 涙と鼻水が下に垂れないよう上を向き、自分のことを哀れに思いました。

 やっぱりこのノート、不思議な力が……

 涙が落ちないよう上を向き、天井からつるされている二本の蛍光灯だけを見つめていました。
 誰にも見られることはない。
 一人きりだから大丈夫だと思うと、声を出し泣き始めてしまいます。

「うぇーーーん」

 みじめな自分を噛みしめていました。
 しばらくすると、私しか居ない部屋から、突然声が聞こえてきました。

「どうしたの? なぜ泣いてるの?」

 その声はまるで、不安になり困っている子供の声が聞こえます。 

 一瞬戸惑いました。心臓がキューっと縮まる思いです。
 声が聞こえる方にゆっくり目線を写すと、ノートに描いた彼女が話しかけています。

「大丈夫?」

 描いた時点では、腕は下ろしまっすぐ前を向いていた彼女でしたが、今は手を胸元で組み見上げています。
 不思議な状況に瞬きさえも忘れると、目に溜まっていた涙がひと雫、彼女の足元に落ちました。

「きゃっ」

 彼女は落ちた涙を飛び跳ねるかのように避けると、気を使かいながら話ます。

「濡れちゃうよー」

 私は急いで手の甲で涙を拭き鼻をすすると、慌てるように謝っていました。

「ごめんなさい」

 そして改めて彼女を見ました。