ミーコの願い事

 私は人が苦手です。そんなことを思う人は数多くいるのでは無いでしょうか? 私もその中の一人です。
 
 高い丘に位置する公園で、そんな言葉を心の中でつぶやいていました。
 目の前には東京の町外れと、県境の大きな川が流れ、夕焼けの光がそれらをあかね色に染め始めています。 

 会社帰りに寄ったこの場所、高台にあることから台公園と呼ばれているそうです。    
 同じ会社で働く女性上司、森川さんにこの場所を教えてもらい。
 帰り道に寄れる。綺麗だからと念を押されると、寄らずに帰る言い訳が思い浮かばず来ています。

 私は振り向き、花壇を見つめました。
 少し下がった場所に広がる花達は、初めて訪れる人を驚かせます。
 数段の階段を下りると花で囲まれ、それ以外は視界に入ることはありませんでした。

 綺麗な風景、素敵な状況のはずなのに、先ほどの言葉を何故だか噛み締めてしまいます。
 一人でいることに寂しく感じたのでしょうか?
 それとも自分に嫌気がさし、もの悲しくなったのでしょうか? 

 心が晴れないまま一通り、花の種類をしゃがむように確認していました。
 そんな行動をしたのは、明日会社でこの場所のことを聞かれた時に、困らないようにするためです。

 花壇には色とりどりの花達。
 
 桃色に色づくマーガレットに、紫色の夏すみれ。名前の知らない花も数多く咲いています。
 ある程度の状況を把握し、長い数分の経過を待つと、帰宅するため立ち上がろうとしました。

 それまで何も感じなかった風が頬に当たると、帰宅の足取りを引き止めているようです。
 目の前のパンジー達も同じ風に揺れ、気持ちよさそうです。

 しばらく見つめていると、揺れるお花達は、移動するかのような錯覚を見せてくれます。
 パンジーの中から違う種類のお花が、顔を除かせました。

 種類ごとに色分けして植えている花壇だったので、気になり自ら確認したのだと思います。 
 
 パンジー達の群れの中央に咲くその子は、星の形をした小さな白いお花でした。
 細い茎で花を支えていて、今にも風でこぼれ落ちそうです。

 なんだろう? この子だけ。

 周りには同じ種類の花はなく、ひっそり咲いているようでした。

「こんにちは、どうして貴方は隠れていたの?」
 
 子供染みていると感じながらも、お花に話しかけてしまいます。
 その花は風に軽く揺れると、不思議な気持ちにさせてくれました。

 嬉しいような、優しく懐かしい気持ち。
 忘れていた何かを思い出させるように、私のことを見つめているようです。 
 
 この花……も、話しかけてくれている?

 弱々しいながらも寄り添わせ咲く姿からは、ひたむきさを感じてしまいます。
 自分自身と比べると、心苦しくなってしまい、心の中にある言葉を話していました。

「……」