たった今、恭くんがゲスト出演した刑事ドラマの再放送がテレビで流れていて、わたしは隣に本物がいることも忘れて夢中になっていた。


顔が良いだけの俳優はどこにでもいる。
けど、恭くんは違う。


新人とは思えない暗い演技や幸の薄い役が得意で、このドラマがリアルタイムで放送されたときは、恭くんの芸名と役名がトレンド二、三位を取ったくらい注目を浴びた。


物語の中盤まで容疑者として主人公の刑事たちを引っかき回すのだけど、終盤で別に犯人がいることがわかる。


最後の最後で本音をこぼした恭くんの演技は、思い出しただけでも泣きそうになる。


恭くんは自分の演技を見られるのが恥ずかしいみたいで、自分がいる前ではやめてと言うんだけど。



「それで、話ってなに?」


今日は恭くんに「話がある」と言われて、我が家の隣にある五十嵐宅にやってきた。


男女の幼なじみが隣同士のお家に住んでるなんて、これも漫画にしかあっちゃいけない設定だよなと思いつつ、本音を言えばうれしい。


おかげで、こうして気軽に出入りできる仲になれているのだから。