「すごいなぁ……(きょう)くん」


気づけばそんなひとり言をこぼしていた。


「お褒めいただいてうれしいけど、絢音(あやね)。そろそろ話してもいいかな?」

「えっ、あ、ごめん」


ドラマの少年と、口調は違えど声はまるっきり同じの彼に画面の外から話しかけられて、はっとする。

わたしはテレビの電源を切って、体を隣に向けた。


ドラマを観るのが日課の高校二年生。

子どもの頃から変わらないボブカットがお気に入りのヘアスタイルで、自分で言うのもなんだけど笑顔が似合う女子。


それがわたし、柏井(かしい)絢音。


隣に座るのは、幼なじみの五十嵐(いがらし)恭花(きょうか)くん。

黒髪が似合う超かっこいい男の子で、わたし以上に笑顔がすてきな人だ。


恭くんには、冗談と思ってしまうような。

なんなら漫画の設定にしか使ってはいけないような、ふたつの顔がある。


ひとつは、わたしと同じ高校二年生の顔。
……こっちはふつう。


もうひとつが、特撮ドラマの主役に決まったばかりの現役俳優さんの顔だ。