「入学式…俺寝坊してさ?学校着いた時にはもう終わってたんだよね」
なんとも、篠宮らしいな。
「あの頃は免許持ってなかったし、無免で捕まって入学早々に退学は避けたかったから…バイクじゃなくてタクシーで学校まで行った」
『……自転車とか乗らないの?』
「えー…しんどいじゃん、漕ぐの」
……地球に優しくない男だな。
っていうか、無免許でも乗ってたってこと?!
「その時、学校に向かう途中で救急車とかパトカーが停まってる場所を通り過ぎた。同じ制服の奴が何人か傍観してたし…事故でもあったのかなって、、横目に見ながら俺はその時スマホをいじってタクシーに乗ってた」
──社長出勤…いや、社長通学?
何この人、お金持ちなの?
「俺が過去に戻りたいと思ったのは今まで一度だけ、勇牙が居なくなったあの日。あの日をやり直したいと何度も思った…けど今、また同じように戻りたいと思ったよ。あの入学式の日、寝坊せずにちゃんと式に出て藍ちゃんに出会ってたら俺は…バカなことを考える藍の手を掴んでたと思う」
………篠宮、
「断言出来る。志帆が居てもいなくても、藍ちゃんを一目見た瞬間から、俺は…藍ちゃんに惹かれてたと思う。」
ダメだよ、篠宮には志帆さんがっ、
「実際、保健室で会った日から俺は藍ちゃんに付き纏ってるし?入学式で出会ってたらきっと、家まで着いて行ってたと思うんだよね」
『…しのみやっ、』
「ごめんな、守ってやれなくて。その代わり、二度と藍がバカな考えを起こさねぇように…これからはそばで守ってやる。って、さっきお願いごとしたし?叶えよーな、藍ちゃん」
そう言って髪を撫でてくれる篠宮の手が温かくて…不覚にも泣いてしまった。やっぱり好きだ
私は篠宮 麻斗のことが─…大好きだっ。