『……私ね、中学ときいじめられてたんだ』



近くにあった机に座って、こちらに視線を寄越した篠宮と目を合わせて語る。



『逃げたくて、誰も知らない遠いこの高校を選んだ。それでも入学式の日の帰り…駅で中学の時のクラスメイトを見つけて─…無性に消えたくなった』



「……え?」



『事故にあった…なんて言ったけど、ごめんあれ嘘なんだ。本当は自分で飛び降りた。でも私は中途半端だから…場所もそんなに高くない所を選んで…ただ痛い思いをして終わった。だから今もこうやってしぶとく生きてる』



「藍ちゃん?ちょっと、待って…本当に?」



『その時思ったことがある。自分が居なくなったあと…あの人たちは少しは悲しんでくれるかな?って』




こんな話、誰にもするつもりは無かったし、墓場まで持っていくつもりだったけど…篠宮もきっと、誰にも言いたくない話をしてくれたんだろうと思うから─…聞いてしまった以上、




自分もそれなりの話をするべきだと思った。




『あの人たち…って言うのはいじめてたクラスメイト達じゃなくて…家族。私の家族って冷たい人達ばっかりだけど…子どもの頃は優しかったから』



「藍ちゃん、そっち行ってもいい?」



私の方に歩いて来ようとする篠宮に首を横に振って拒否の意思をみせる。