──ウザくてアザといのは、私の方だよ。
篠宮に背を向けて軽音部の部室を出ようとした。恋なんて…したのはいつぶり?好きな人と呼べる異性なんて正直、初めてかもしれない。
だから分からない。好きな人との距離の縮め方も、彼を諦める方法も…応援するような言葉をかける勇気も…私にはない。
それでも精一杯思いついた強がりがさっきの発言だった。でもいま少し反省してる。何だか後味が悪い…志帆さんのことを篠宮に伝えてしまったことを…少し、後悔してる。
やっぱり私は中途半端。ヒロインにはなれないし、悪役になりきることも出来ない…ただの脇役エキストラ。
───笑える、
昔からそうだった。この学校に入る前から…中学の時から私は─…
「……友達なんだ、」
ふと、後ろから聞こえてきた篠宮の声に足を止める
「志帆が好きな男は…俺の、友達なんだ」
……そーなんだ、大変だね頑張れ。
「ソイツと志帆が一緒に居るときに、ガラの悪い頭のおかしな連中が…志帆に酷いことをしようとして…モメた」
……なんの、話し?
急に語り出した篠宮の様子がなんだかいつもと違う気がして…振り返って向き合い、彼が再び口を開くのを待った。