「……なに?追加で5秒抱き締めようか?」



両手を広げてみせる篠宮の腕の中に一瞬…飛び込んでしまいそうになって焦った。



ヤバいな、私…奴に支配されつつあるぞ。




『………要らない』


「藍ちゃんの目が"寂しい"って言ってる」


『言ってない、自意識過剰すぎ、引く』


「"行かないで"って聞こえる」


『怖いこと言うのやめて、もう帰るっ』


「─…藍、いつでも電話していいよ。眠れなかったら電話繋げて寝てくれていーから…ゆっくり休めよ」




あぁ、どうしようっ



「じゃ。そろそろ行くわ!また明日ね!」



背を向けて去っていく篠宮に対して、"行かないで"なんて思いたくないのに。寂しいなんて言いたくないのに。




『……麻斗、』



ねぇ、これ以上優しくしないでよ。私はあなたとは違う。男友達と抱き合うなんて…出来ない




困るでしょ?私に好きになんてなられたら…



──…困るよね、篠宮。