篠宮に"待て"と言われたところで、父親は足を止めることはなくそのまま家の門をくぐって行ってしまった。




──…なんてことをしてくれたんだ。




頬を叩《はた》かれたことで、私の夜の外出の件はチャラになったようなものだった。それをこの男の余計な一言二言により、再び怒りの鉄槌が下るということを─…篠宮は知らない。




帰ってから根掘り葉掘り聞かれる私の身にもなれよ。バイクをコンビニに置いてきたところで自分から余計な発言をしてたら何の意味もないだろ。




「……藍ちゃん、家…お邪魔してもいい?」


『ダメに決まってるでしょ。もう帰って』


「帰れって言うなら、いい加減…手、離せよ」




そこでハッと思い出して…慌てて掴んでいた篠宮の人差し指を離した。




何をやっているんだ、わたしは、、




「藍ちゃん?いつもの"やられたらやり返す"精神はどこに消えたの?さっきのは…やり返しても許される場面だったよ」




──…なに、それ。

何の定義?誰が決めたの?