「っあ…俺からも一つだけ、いい?」



スマホを片付けて、真剣な面持ちで私に尋ねる篠宮に『なに?』っと首を傾げてみせる。




「…正当防衛、にしてもやり過ぎ!相手が女だとして、先に叩かれたとしてもっ…グーで殴るのは間違ってる。藍ちゃん?やられたからやり返す、その考えを否定するつもりは無いけど…今回のはちょっと度が過ぎてる、やり過ぎ」




篠宮は私の左手にそっと触れる




「……ほら、赤くなってる。殴られた方はもちろん痛いけど…殴る方だって痛いでしょ?俺は藍ちゃんにケガをして欲しくない。殴られるなんてもちろん論外だけど、殴る側としてケガを負わせるのも…イヤだ。」



『………左手だよ?』


「……利き手じゃない方で殴ればいいって話じゃねーから。」




──…バレてたんだ。




「利き手で殴ってたらもっと痛かっただろうね、お互いに。藍ちゃん、そんな無駄な配慮するくらいなら暴力なんてふるうな」



『……じゃあ、どうすればいいの?叩かれて、ムカついて、やり返したくなった時は…どうやって乗り越えればいいわけ?』



「これ、使って俺を呼べ。どこに居てもすぐに駆けつけてやるから」




これ…っと言って私のスマホを指さした篠宮に、不覚にも一瞬ドキッとしてしまった。