「痛ってぇ…藍ちゃん、痛い─…挟まれた!」
──…いや、知らんけど。
『何してるの、立ってたら危ないよ』
発車したバスに揺られて、篠宮がふらつく。
ほら、言わんこっちゃない。
「………藍ちゃんが、置いていくから悪い」
麻斗は私の後ろに座り、拗ねたような声を出して項垂れている。
『さっきの…彼女?』
振り向くことなく、篠宮に尋ねると、、
「あれ…?なんで知ってるの?」
って…あっさり"彼女"だと認められ、なんとも言えない感情がグルグルと駆け巡る
『別に…なんとなくそう思っただけ』
「あー…もしかして藍ちゃん、嫉妬?俺に彼女が居て寂しいの?ったく…可愛いなぁ」
ヨシヨシ…って、後ろから髪を撫でてきたのでその手を勢いよく払いのけた。
『彼女持ちのくせに触らないで…気持ち悪い』
間違ったことを言ったつもりは無い。