『…篠宮って暴走族の総長さんなんでしょ?』
日向(呼び捨て扱い)と共に学校を出てすぐ足を止める。私に尋ねられた日向が首を縦に振ったのを確認して、
『じゃあそのチームメイトからチャリ借りても別に怒られたりしないよね?総長が篠宮なら篠宮の為に動こうとしてる私が勝手にチャリを借りても怒られないよね?』
「………え、俺バイクで来てるから俺の後ろ乗ればよくない?!」
『篠宮以外の人の後ろに乗るわけないじゃん』
「(……藍ちゃん、かっけぇ)」
二人して駐輪場に向かったものの、当然だがどれが篠宮のチームメイトのチャリなのか分かるはずもなく…諦めようかと思った時─…
「これ、どーみてもそうじゃない?」
一台だけ、物凄くダサいカスタムがされているチャリを見つけた。ハンドルが変な方向に曲がっていて"AZ"というダサめなステッカーがペタペタと貼られているママチャリ。
「…けど鍵かかってんなぁ、顔見知りのやついるから何人か声掛けてみる…ちょっと待っ、」
隣で四の五の言ってる日向を無視して、駐輪場の横に置かれていたコンクリートブロックを持ち上げてそれをママチャリの鍵の部分に2、3回振り落とせば…ガチャン、っと音を立てて鍵が壊れて地面に落下した。
「………藍ちゃん、常習犯?」
『火事場の馬鹿力ってやつです』
「難しい言葉知ってるね?藍ちゃんって頭いいの?」
『藍ちゃんって呼ぶな!!』
遊佐くんの高校を日向に聞いて、チャリで行ける範囲であることに安心しつつ…日向はバイクで先に向かっていると言って現地集合ということになった。