『傷つかないわけ、無いっ…友達を失って、その後アンタの父親に理不尽な要求をされてっ…断ることも出来ずに言うことを聞き続けた篠宮が、何とも思わなかった訳がない!!』




篠宮の感情は?罪悪感で押しつぶされそうな彼を誰か一人でも慰めてあげようとしたの?




『友達を失ったことを悲しむ暇もない。学校ではアンタの世話をして父親の機嫌をとって…家では家族の面倒を見て─…篠宮は、勇牙くんのことを想って一人泣く時間すら無かったんじゃないの?』




「そ…れはっ、私には…分からな、」



『……分からない?なら私と出会う前の篠宮は傷付いてなかった、なんて言わないでよ!私は篠宮のことを何も知らない。私には何もかも話せって言うくせに、自分のことは全然…話してくれないからっ』




だけど、それでもっ─…




『篠宮のことを好きだって気持ちは…中途半端な偽善で一緒に居るとか言ってるアンタなんかには絶対負けない!!』



もう一発叩いてやろうと手をあげたとき…背後からその手を掴まれて…驚いて振りかえると、




「………へぇ、そんな理由…あったんだ。尚更ムカつくよ、麻斗のやつ」



以前、私の胸ぐらを掴んできたあの男子生徒…日向の姿がそこにあった。