篠宮は…どうして私に何も話してくれないの?志帆さんと結婚するかもしれないってこと…どうして黙ってたの?



友達を失った辛さなんてものは私には分からない。だけど─…そこまでする必要がある?




篠宮の人生は、篠宮のものでしょ?どうして居なくなった人のために…人生を捨てる必要があるの?




「あっくん、昨日気を失って倒れてしまって…ウチで泊まってもらったから、だから今日はお休みなんだよ」



……身体が震えた。



それは恐怖とか、寒気とかそんなんじゃなくてただただ"怒り"で手の震えが止まらなかった




「……私が好きなのはあっくんの友達だった勇牙だけど、もう彼は居ないし…私があっくんと一緒に居るのが一番、何もかも上手くいくと思うんだ」




なんで、そんなこと言うの?




「だって、今までだってそうしてきたから!三澄さんが現れるまではずっと、あっくんには私だけだったし…その時はこんな風に、あっくんが傷つくことも無かった」



傷つくことが無かった…?本気で言ってる?




「私いまから三澄さんに酷いことを言うけど許してね?あっくんの事を諦めてください。私にあっくん…麻斗を、返してください」




──…ふざけんなっ、



震えていた右手でギュッと握り拳を作って…それを高く掲げる。志帆さんの頬にそれを振り落とそうとして…直前で握っていた手を開いて、




パチンっ…っと、平手で彼女の頬を叩いた。