「─…分かったから、早く娘を返してくれ」


「約束、破ったらカナダまで藍ちゃん連れ去りに行くんで…そのつもりで。」






篠宮はそっと自分の身体を横にずらして、父親のところへ行くように私の背中を軽く押した






「─…藍ちゃん、これで明日からも俺と一緒に居られるね!またこのオッサンになんかされたらすーぐ電話して?冗談抜きでマジで飛んできてやるから」



「…藍、もう入りなさい。お風呂…温めてるからそのまま風呂場に向かうんだ、いいな」



「おいおいおいおい、まだ俺と藍ちゃんが話してる最中なんですけど?」



「……君も、もう早く帰りなさい」




篠宮と繋いでいた手を…父親によって離されてしまった。それが寂しくて振り返って篠宮の顔を見つめるけど─…




「じゃあね、藍ちゃん─…また、明日」




いつもみたいに笑顔を貼り付けて私を見送ってくれる篠宮に安心して…自分も笑顔で手を振った。




また明日…いつも通り会えるんだって思ってた。だって篠宮はなんだかんだいつだって私と一緒に居てくれたから。




明日も当然、同じような日々を過ごせると思っていたのに─…翌日の学校に、篠宮が登校してくることはなかった。