「国外に追い出すくらいなら、俺が貰ってやるって言ってんだよ。金なんて要らねぇし、ただコイツをテメェの戸籍から抜けさせてさえ貰えればもう二度とアンタの視界に入ることのないように一生俺が藍を匿ってやる─…どうする?それでもコイツ、留学させる?」




篠宮の真っ直ぐなその言葉は、父親にちゃんと届いたみたいで─…父は珍しく表情を崩して篠宮のことを睨みつけている





「そんなこと、許されると思っているのか?藍は…君のような低俗な人間と一緒に居るような子じゃない。」





父は篠宮の後ろにいる私に手を伸ばしてくるが、渡さない…っと言うように、篠宮が私をひたすら隠し続けてくれる




「─…だと思った。アンタ娘が可愛くて仕方ねぇんだろ?このまま日本に藍がいる方が、その"三澄の家の人間として"…みたいな駒に使われることになるだろうから。あえて国外に逃がそうとしてんだろ?」




………そーなの…?



「今だって、三澄の家がどうとかじゃなくて単純に藍ちゃんと一緒に居るのが俺みたいな人間だってことに文句言ってたし。初めてここで会った時から分かってたよ。すげぇ不器用な人なんだろうなー…って。」



「……勝手なことを言うな。どう解釈しようと君の勝手だが、藍を連れ去るなんてことは許さない、絶対に」



「ならそっちも譲歩しろよ。藍ちゃんをこの家に帰して欲しいなら海外に留学なんてさせるな。それが約束出来ないならもうこの家に藍ちゃんは帰さない。」




……本気で言ってるの?そんなこと、出来るはずないっ、




「方法なんていくらでもある。アンタが藍ちゃんに手をあげてるところを俺は実際にこの目で見てるからね。出るところに出て、困るのはアンタの方じゃない?」



「………何が目的なんだ、金なら渡す。だからもうウチに関わらないでくれ」



「目的…?そんなん最初から言ってんだろ。藍を留学させるのを辞めろって、それだけ」




父親は諦めたように目を閉じてため息をつくと、静かに首を縦にふって頷いた。