『あの…私一人で待つんで、もう帰ってもらって大丈夫ですよ?』



約束があるのに一緒に待ってもらうのは申し訳ないし、もうバカなことをしようとは思わない。一緒に居ても気まずいだけだし、正直居心地が悪かった。




──…なのに、



「それは無理。麻斗と約束したから─…」





あぁ、なるほどな…やっぱり二人は今でも仲良しなんだ。






「それに、俺はアンタには感謝してる。あの時蓮水さんのことを助けてくれて、ありがとう」


『…え、』


「だから止めようと思った。アンタが居なくなったら多分…蓮水さんが悲しむだろうから」



篠宮の友達、遊佐京志郎という人は…何を考えているのか分からないように見えて、根はとても単純。大事に思う人の為なら自分の時間を使うことを惜しまない…とても優しい人だ。




『……好きなんですね、蓮水さんのこと』


「まぁ…本人全く気付いてないのが最高に面白いんだけどね」




え、そーなの?っと遊佐くんに視線を向けたとき…交差点の方からバイクの轟音が聞こえてきて、今度はそちらに視線を向ける。




バイクはそのままノンストップで歩道に乗り上げてきて、私たちの目の前で止まった。




「……2分57秒、って…交通ルール、ガン無視だろお前」


「は?遊佐にだけは言われたくないっ」



バイクから降りてきて、私の目の前に立った篠宮が…黙って左手を振り上げたのが見えて"叩かれる"と思った私は反射的に目を閉じた



しかし、いつまで経っても訪れない痛みに不安になり…恐る恐る目を開けると、



「俺が籃を叩くわけねーだろ。」



しゃがみ込んで私と同じ高さで目を合わせた篠宮は…再び左手を伸ばしてきて、、



『い、痛いっ、』


「うん、痛いよね…籃ちゃん」




おデコを指で弾かれて、突然のことについていけず戸惑ってしまう。