『……篠宮麻斗、って…名前?』
振り返ることなく独り言ようにそう呟くと、
「ん?あぁ、俺の名前?そうだよ、篠宮!だけど、出来れば麻斗って呼んで欲しいなぁ…俺、自分の苗字嫌いなんだよね」
………いや、知らんけど。
「そーいえば、あのあと…友達出来た?」
『………おかげさまで、複数の男子と女子と連絡先を交換することが出来ましたっ、』
「──は?!男子っ?!なんで男子っ?!いや俺より先に藍ちゃんの連絡先入手した男って誰っ?!ちょ、スマホ貸してっ!!!」
後ろから手を伸ばしてきて…私の手の中から勝手にスマホを奪い取った篠宮。ムカついたので振り返って篠宮の頭をゴツンっとグーで殴った
「痛ってぇ─…藍ちゃん?人前で暴力はダメだって…俺言ったよな?」
私の手首をグッと握る篠宮。その力が強くて…少しだけ痛い。
『……黙って人のモノ盗んだ篠宮の方が悪い』
もう一発、殴ってやろうかと…空いている方の手で拳を作った時─…
信号が赤になったのか…バスが停車して、、それとほぼ同じタイミングで窓の外に一台のバイクが並ぶようにして停車した。
別に普通の光景だと思う。それが普通のオートバイなら…目を向けることも無かった。ただ…
『………なに、あれ』
隣に並んだバイクは、テレビやアニメなんかでしか見た事がない─…改造された派手なバイク
暴走族…っていうの?そういう人たちが乗っているような、そんな派手な…バイク。
私の視線を辿るようにして、同じように窓の外を見つめた篠宮。すると…突然私の後頭部に手を回してきて…抱き締めるみたいにして、顔を胸に押し当てられた。
───何やってんだよ、苦しいじゃないか