私は吉野美優、28歳のOL。
身長は少し高めの168センチ。
学生時代バスケで鍛えた体は筋肉質で、どちらかというと細身。
黒くてストレートの黒髪を肩の長さで切りそろえたワンレングスは、ここ数年私の定番スタイルになりつつある。
仕事は、総合商社NAGASIMAの営業職。
大学を卒業してから5年間、営業一筋で働いてきた。
NAGASIMAは日本でも名の知れた優良企業で、一流商社。
だからなのか、同僚女子の中には旦那様捜しのために就職したんじゃないだろうかって思える人もいるけれど、私は今の仕事にやりがいと楽しさを見出している。

「おはようございます、美優さん」
「ああ、おはよう」

地上20階建てのNAGASIMAの本社ビル10階にある営業部のフロアに降り立ったところで、入社2年目の石田祐樹君が声をかけてきた。
彼は私がチーフを務める営業二課のメンバーで、今は私が指導係としてついている。
覚えも早いし、物腰も柔らかく人当りもいいのだけれど、まだ学生っぽさが抜けないのが心配点ではある。

「ねえ石田君、会社では名字で呼びなさい。気を付けないと外でも出てしまうわよ」
「えー、大丈夫ですよ。仕事が始まれば切り替えますから」

まるで友達にするように唇を尖らせて見せる石田君のその態度が問題だと思うのだが・・・

「とにかく、仕事中はもちろん社内では敬語。いいわね」
「はーい」

一応釘はさしたものの、かなり怪しいな。