4月








「いただきまーす!」

給食の時間。クラスメイトが声をそろえて、教室は一気ににぎやかになる。

「あ……」

スプーンをとりかけて、紺は手を止めた。となりのマヒナの席に、タブレットがぽつんと置かれている。ついさっき、校内放送で、生徒会のメンバーに集合がかけられていた。書記のマヒナは、すぐに教室を飛び出していったけれど、肝心の仕事道具は忘れていったらしい。

紺は立ち上がると、マヒナのタブレットを取った。とりあえず、生徒会室まで持っていくことにする。

「ふぇ、紺ちゃん、どうしたの?」

そばにいた女子が、パンをほおばりながら尋ねてくる。

「これ、マヒナに届けようと思って」

タブレットをちょっと持ち上げてみせると、相手はキョトンとした。

「え、優しい。わざわざ持っていってあげるんだ」

まわりのクラスメイトも、いきなり教室から出ようとしている紺に気づいて、視線を向けてくる。紺は、あわてて首をふった。

「優しいとかじゃないよ。でも、やっぱり、いとこだし……」

答えてから、しまった、と思った。

案の定、クラスメイトたちが感心したような顔になる。

「昔の人って、血のつながりを大事にしてたんだっけ」
「さっすがサムライ」

そう言って、ニヤニヤしている男子もいる。

紺は、あいまいに笑うしかなかった。