グレーの地味なジャケットとパンツ姿の弟がパソコンショップのドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
オーナーが笑顔で迎えた。
その表情に警戒心は浮かんでないように思えた。
しかし急いては事を仕損じる。
店内を見回してパソコンや周辺機器などを見る振りをしながら、タイミングを見計らった。
「何かお探しですか?」
声をかけてきたので用件を切り出した。
「実は、合成写真をお願いしたいのですが」
弟はなんの感情も表さずに告げた。
「どんなお写真でしょう?」
声は静かだったが、オーナーの顔には明らかに関心を示す表情が浮かんでいた。
弟は顔写真を2枚渡して、依頼内容を説明した。
「ほう、スカイツリーのテッペンで逆立ちをしている写真ですか」
今まで受けたことのない依頼なのか、興味をそそられているような口調だった。
「できますか?」
「ええ、もちろんできますが、どうしてそれを?」
「世界一高い塔の上で逆立ちしたら、どんな気分になるかなって思いましてね」
自分が高所恐怖症であり、背丈以上の高さに立つとへっぴり腰になって足がすくんでしまうことを身振り手振りで示したあと、「キンタマが縮み上がるんですよ」と自嘲気味に笑った。
それに釣られて笑みを浮かべたオーナーに、「だからこそ、有りえないことを実現してみたいのです」と依頼理由を説明した。
「なるほど、そういうことですか」
納得したような顔になったオーナーは、仕上がりの具合と価格について説明を始めた。
「簡単な合成が4千円、ぱっと見では合成とわからないレベルが8千円、玄人でもわからないレベルになると2万円になりますが、どのレベルにいたしましょう?」
「2万円で」
弟は即決した。
「ほう」
オーナーは、迷うことなく決断した弟を感心したような目で見つめた。
「いらっしゃいませ」
オーナーが笑顔で迎えた。
その表情に警戒心は浮かんでないように思えた。
しかし急いては事を仕損じる。
店内を見回してパソコンや周辺機器などを見る振りをしながら、タイミングを見計らった。
「何かお探しですか?」
声をかけてきたので用件を切り出した。
「実は、合成写真をお願いしたいのですが」
弟はなんの感情も表さずに告げた。
「どんなお写真でしょう?」
声は静かだったが、オーナーの顔には明らかに関心を示す表情が浮かんでいた。
弟は顔写真を2枚渡して、依頼内容を説明した。
「ほう、スカイツリーのテッペンで逆立ちをしている写真ですか」
今まで受けたことのない依頼なのか、興味をそそられているような口調だった。
「できますか?」
「ええ、もちろんできますが、どうしてそれを?」
「世界一高い塔の上で逆立ちしたら、どんな気分になるかなって思いましてね」
自分が高所恐怖症であり、背丈以上の高さに立つとへっぴり腰になって足がすくんでしまうことを身振り手振りで示したあと、「キンタマが縮み上がるんですよ」と自嘲気味に笑った。
それに釣られて笑みを浮かべたオーナーに、「だからこそ、有りえないことを実現してみたいのです」と依頼理由を説明した。
「なるほど、そういうことですか」
納得したような顔になったオーナーは、仕上がりの具合と価格について説明を始めた。
「簡単な合成が4千円、ぱっと見では合成とわからないレベルが8千円、玄人でもわからないレベルになると2万円になりますが、どのレベルにいたしましょう?」
「2万円で」
弟は即決した。
「ほう」
オーナーは、迷うことなく決断した弟を感心したような目で見つめた。