選挙戦が始まった。

「私は三つのお約束をします。一つは学園都市計画の実現、一つは美観都市計画の実現、もう一つは禁煙都市宣言です」

 桜田の第一声は夢開中央商店街広場で発せられた。
 しかし、桜田の話を聞いていたのはたった四人だった。
 買い物帰りの主婦らしき女性が三人と若い女性が一人。
 それでも、自分の話を聞いてくれる人がゼロではないことに安堵し、力さえ得ていた。
 
「夢開市には大きな産業が何もありません。名産品もありません。自慢できるものが何もないのです」

 若い女性が頷いた。
 
「人口が減り、今年末には5万人を切ると言われています。この20年で人口が半分になってしまいました。その結果、空き家と空き地が目立つようになり、耕作放棄地も増え続けています。こんな状態を放置していていいのでしょうか」

 四人全員が首を横に振った。
 
「今変革しないと大変なことになります。最後のチャンスなのです」

 全員が食い入るように桜田を見つめた。
 
「時代はハードからソフトへと大きく変わろうとしています。物から知恵へ、知恵から心へ、心から愛へ、どんどん変わってきているのです」

 核心へと踏み込んだ。
 
「夢開市における未来創造のキーワードは、知恵、心、愛です。そして、それを育てるのは教育に他なりません」

 足を止める人が増えてきた。桜田の声に力が入った。