「なんであんたが学級委員なの? 寒田さんに譲りなさいよ」

 黄茂井がにじり寄った。

「そんなこと言われても、わたしがお願いしたわけじゃないから……」

「嘘言わないでよ。先生に何かしたんでしょ。親が何か持っていったんじゃないの?」

 黄茂井の顔がわたしの目の前にあった。

「そんなこと……」

 立ち上がろうとしたわたしの肩を寒田が押しとどめた。

「ボスはわたし。あんたは家来。いいわね」

 有無を言わさぬ迫力に、怯えて声も出なかった。
 逆らうことなんてできなかった。
 
 次の日から虐めが始まった。
 先生の目を盗んで、黒板に〈鬼魔子〉と書き、囃し立てたのだ。
 
「き・ま・こ、き・ま・こ、鬼の子、悪魔の子!」

 二人とも体が大きく、担任の先生と同じくらいの身長で、同じ組の男子よりも背が高かった。
 小柄なわたしには巨人に見えた。
 威圧的に見下ろす彼女たちに何かを言えるはずがなかったし、それは他の子も同じだった。