「イチゴのミルクプリンが欲しいな」

 黄茂井が要求したのは200円のスイーツだった。

「私は黒ゴマのパフェがいいな」

 寒田は280円のスイーツを要求した。
 それでもターゲットは断らなかった。
 いや、断れなかった。
 応じている間は暴力がないからだ。
 しかし、断ったらまた膝蹴りと肘打ちが飛んでくるのは目に見えているので、NOという選択肢はなかった。
 自分が買いたいものを我慢して二人の要求に応えた。
 
 それでも、その要求が月1回から週1回になり、3日に1回になると、ターゲットの2,000円の小遣いでは足りなくなった。
 どうしようもなくなって泣きついたが、二人は聞き入れなかった。 
 
「お年玉貯めてるんじゃないの?」

 寒田に詰め寄られた。

「下ろしてきなさいよ」

 黄茂井が肘打ちの真似をした。

「でも、通帳はお母さんが持っているから……」

 ターゲットは涙声になった。

「だったら欲しいものを買いたいって言いなさいよ」

 寒田がにじり寄った。

「でも出来なかったら、」

 黄茂井が拳を握りしめた。

 ターゲットは、余りの怖さに体が震え始めた。