その3日後、また手紙が届いた。
桜田は本部長の目の前で封を切った。
『最後通牒! 3日以内に辞任しなければ、醜態写真を町中にばら撒く!』
しかし、文言以上に写真のインパクトが強かった。
桜田の横で本部長の顔は青ざめ、無修正の写真を持つ手が震えていた。
彼の弟だった。
そして、醜態そのものだった。
そこには女の鞭打ちに身悶える恍惚の表情が写っていた。
桜田は見てはいけないものを見た気がして思わず顔を背けた。
それは本部長も同じだろうと思ったが、写真を置いた彼はすぐさま弟に電話をかけ、市役所に呼びつけた。
仕事を早引きしてすぐに来いと。
何事だろうかという表情で市長専用応接室のドアを開けた弟はソファに座るなり渡された写真を見てがっくりと肩を落とした。
そして、写っているのが自分であることを認めた。
「なんでこんなものが……」
それ以上は言葉が続かず、写真を持ったままテーブルにうつ伏して大きく肩を震わせた。
「なんでこんなことをしたんだ」
本部長に肩を掴まれて引き起こされた弟はうな垂れたが、少しして蚊の泣くような声で話し始めた。
パソコンショップのオーナーを酔い潰し、問題の写真をスマホのカメラに収めたが、実は、SMの写真もスマホに写し取っていた。
異常に興味を惹かれたからだ。
自分にはその気が無いと思っていたが、鞭打つ若い女性のなまめかしい姿態と、恍惚に悶える男たちの表情から目が離せなくなったのだという。
「長時間労働のストレスが原因だと思う。中間管理職としての板挟みにも悩んでいたし。それに、家庭を犠牲にしていたので妻ともうまくいっていなかったから……」
唇を噛んだ弟は、声を震わせながら話を続けた。
「非日常へ逃げ込みたかったんだ。何もかも忘れたかった」
その店に一度行って病みつきになり、二度三度と通ううちにはまり込んでいった。
そして、抜け出せなくなった。
自分を虐め抜く女の命令には絶対の服従を示し、言われるままどんな格好でもやった。
どんな仕打ちも喜んで受けた。
SMプレイをカメラに撮られても恥ずかしいと思わなかった。
それどころか、シャッター音がする度に却って快感を覚えた。
いつしか彼女の奴隷のようになってしまっていた。
「取り返しのつかないことを……」
真っ青になった顔を両手で覆った。
その様子を見ていた本部長が引きつったように声を震わせた。
「これがばら撒かれたら大変なことになる」
桜田は頷き、即座に警察へ届け出た。
猶予は3日しかなかった。
その間に捕まえなければならない。
時間がない中で警察がどう動いてくれるのか、前回のこともあり不安を感じたが、今回は警察の動きが早かった。
市長という肩書を持つ桜田への対応は前回とは明らかに違っていた。
すぐさまSMクラブに立ち入り捜査が行われた。
しかし、鞭打ち役の女は店から姿を消していた。
次の居場所を告げずに突然辞めたという。
住所も定かではなかったし、本名もわからなかった。
それでも店内を捜索すると、所有物が従業員用化粧室に残っていた。
歯ブラシとコップだった。
そこから指紋を採取して、手紙と写真に付いた指紋と照合した。
合致しなかった。
彼女が差出人ではなかった。
次に、枯田と選挙参謀とパソコンショップのオーナーに対して任意同行による取り調べが行われた。
しかし、三人は揃って嫌疑を否定した。
指紋も合致しなかった。
捜査は行き詰まった。
一連の報告を受けた桜田は肩を落とした。
3通目が届いてから3日目を迎えた。
今日捕まえなければ、明日写真をばら撒かれる。
そうなれば、本部長の弟の生活は破綻する。
会社にはいられなくなり、家族からも見捨てられるだろう。
その影響は桜田にも及ぶに違いない。
三人は頭を抱えた。
桜田は本部長の目の前で封を切った。
『最後通牒! 3日以内に辞任しなければ、醜態写真を町中にばら撒く!』
しかし、文言以上に写真のインパクトが強かった。
桜田の横で本部長の顔は青ざめ、無修正の写真を持つ手が震えていた。
彼の弟だった。
そして、醜態そのものだった。
そこには女の鞭打ちに身悶える恍惚の表情が写っていた。
桜田は見てはいけないものを見た気がして思わず顔を背けた。
それは本部長も同じだろうと思ったが、写真を置いた彼はすぐさま弟に電話をかけ、市役所に呼びつけた。
仕事を早引きしてすぐに来いと。
何事だろうかという表情で市長専用応接室のドアを開けた弟はソファに座るなり渡された写真を見てがっくりと肩を落とした。
そして、写っているのが自分であることを認めた。
「なんでこんなものが……」
それ以上は言葉が続かず、写真を持ったままテーブルにうつ伏して大きく肩を震わせた。
「なんでこんなことをしたんだ」
本部長に肩を掴まれて引き起こされた弟はうな垂れたが、少しして蚊の泣くような声で話し始めた。
パソコンショップのオーナーを酔い潰し、問題の写真をスマホのカメラに収めたが、実は、SMの写真もスマホに写し取っていた。
異常に興味を惹かれたからだ。
自分にはその気が無いと思っていたが、鞭打つ若い女性のなまめかしい姿態と、恍惚に悶える男たちの表情から目が離せなくなったのだという。
「長時間労働のストレスが原因だと思う。中間管理職としての板挟みにも悩んでいたし。それに、家庭を犠牲にしていたので妻ともうまくいっていなかったから……」
唇を噛んだ弟は、声を震わせながら話を続けた。
「非日常へ逃げ込みたかったんだ。何もかも忘れたかった」
その店に一度行って病みつきになり、二度三度と通ううちにはまり込んでいった。
そして、抜け出せなくなった。
自分を虐め抜く女の命令には絶対の服従を示し、言われるままどんな格好でもやった。
どんな仕打ちも喜んで受けた。
SMプレイをカメラに撮られても恥ずかしいと思わなかった。
それどころか、シャッター音がする度に却って快感を覚えた。
いつしか彼女の奴隷のようになってしまっていた。
「取り返しのつかないことを……」
真っ青になった顔を両手で覆った。
その様子を見ていた本部長が引きつったように声を震わせた。
「これがばら撒かれたら大変なことになる」
桜田は頷き、即座に警察へ届け出た。
猶予は3日しかなかった。
その間に捕まえなければならない。
時間がない中で警察がどう動いてくれるのか、前回のこともあり不安を感じたが、今回は警察の動きが早かった。
市長という肩書を持つ桜田への対応は前回とは明らかに違っていた。
すぐさまSMクラブに立ち入り捜査が行われた。
しかし、鞭打ち役の女は店から姿を消していた。
次の居場所を告げずに突然辞めたという。
住所も定かではなかったし、本名もわからなかった。
それでも店内を捜索すると、所有物が従業員用化粧室に残っていた。
歯ブラシとコップだった。
そこから指紋を採取して、手紙と写真に付いた指紋と照合した。
合致しなかった。
彼女が差出人ではなかった。
次に、枯田と選挙参謀とパソコンショップのオーナーに対して任意同行による取り調べが行われた。
しかし、三人は揃って嫌疑を否定した。
指紋も合致しなかった。
捜査は行き詰まった。
一連の報告を受けた桜田は肩を落とした。
3通目が届いてから3日目を迎えた。
今日捕まえなければ、明日写真をばら撒かれる。
そうなれば、本部長の弟の生活は破綻する。
会社にはいられなくなり、家族からも見捨てられるだろう。
その影響は桜田にも及ぶに違いない。
三人は頭を抱えた。