◇ 夏島熱男 ◇

「なんでこんなことが!」

 事件のことを知った夏島は怒りに震えた。
 あろうことか、ラグビー部員が不祥事を起こしたのだ。
 それは部員同士の交流会の場でのことだったが、交流会とは名ばかりで実は1年生部員に喝を入れる会だった。

 年が明けて、1月2日に行われた全国大学選手権大会準決勝で敗れたラグビー部は、4年生が退部したあと新主将が決まり、新たな体制がスタートした。
 しかし、主将指名に不満を抱く一人の部員がいた。
 その3年生部員が新主将に相談もなく各学年の部員を集めたのが、この会だった。
 
 陰のボスを目指すその部員は準決勝敗退に苛立ち、酒の飲みすぎも相まって、複数の1年生部員にビンタを張った。
 日ごろの態度がなってないというのが理由だった。
 しかし、実態は絶対服従を誓わせるための脅迫でしかなかった。
 そればかりか、止めに入った2年生にはゲンコツを食らわした。
 鼻血で真っ赤に染まった2年生の顔にビールをぶっかけもした。
 大荒れになりそうなところを3年生が4人がかりで止めてなんとか収めたが、それでお開きになることはなかった。
 1年生を全員正座させ、日本酒の一気飲みを強要したのだ。
 1年生は吐きそうになりながらも飲み続けたが、遂に落伍者が出てしまった。
 一番体が小さい男がぶっ倒れたのだ。
 しかし、陰ボス男は許さなかった。
 ぶっ倒れた1年生部員を無理矢理引き起こし、その部員の顔にタバコの火を押しつけたのだ。
 周りの部員が水をかけて氷を押し当てたことで最悪の状態になるのは免れたが、浅からぬ火傷を負わせることになった。