エレベーターで1階まで降り、エントランスを出ると目の前に汚れ一つない黒い車が停まっていた。

その車へ躊躇いもなくスタスタ足を進める久住さんに戸惑いながらついて行くと、運転席からスーツ姿の男の人が降りてきた。


「お疲れ様です」

「おー」


その男の人は久住さんが車の前に立つと後部座席のドアを開け、慣れたように久住さんは車に乗った。
まるでどこぞの貴族を接するかのようなその振る舞いに私の頭はハテナだらけだ。


「おい、何してんだよ。早く乗れ」

「はっ、はい」


ドアを開けたまま私が乗るのを待ってくれている男の人は目が合うとニコリと微笑んだ。