とある日の放課後。
学校にもすっかり慣れ、この新生活も難なくこなせるようになってきた。

気になる事は、蒼井さんがあの日以来めっきり来なくなった事。
あんなに付き纏っていたくせに。

もしかして久住さんが何か言ったんだろうか、それともただの気まぐれ?


「うぅっ、」


そんな事を考えていると目の前に小さくうずくまる男の子の姿があった。
苦しそうにお腹を押えて唸っている。


「だ、大丈夫ですか!」


反射的に声をかけてしまった。
救急車を呼ぶべきか、誰か呼んで…。

……どうして、こんなに人がいないの。

顔を上げて周りを見渡すといつもはまばらにある人の気配も今日は誰もいない。


「んふふっ」

「えっ?」

「つーかまーえた!!」

「えぇっ!?」


そこで初めて顔を見た。なんと可愛らしい。
あざといくらいにニッコリ笑っている。


「びっくりした?大丈夫だよ!僕はどこも悪くないから安心して!」


もう暑い日が続き、私もカーディガンを脱ぎ半袖だというのにこの子はまだ少し厚めの長袖Tシャツを着ている。
あざとく萌え袖をした手はしっかり私の両腕を掴んでいて、顔に似合わずその手は酷く荒れていた。