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蒼井さんから返してもらった鞄を肩から下ろしソファ置いた。
久住さんが車で時間はあるだろうか。
部屋着に着替えようとした時に、チャイムが鳴った。


「久住さん、すみません急に呼び出したりして」

「いい。何かあったらすぐに連絡するようにって言っただろうが。遠慮するな」

「でも、仕事中だったんじゃ…」


久住さんは珍しく綺麗にスーツを着ていた。
いつもは緩くダボッとした服なのに。


「お前が気にする事じゃねぇ。どうにでもできるんだよ、大人は」


久しぶりに会うというのに、久住さんはどこか機嫌が悪そうだった。
「で?なんだよ」と言う久住さんにハッとした。


「あ、えっと、蒼井縹って人と私は知り合いなんですか?」

「…あぁ、まぁ」

「最近凄く付き纏われてて…。でも良かった、本当に知り合いだったんですね」


久住さんの一言にあの人と私は本当に友達だったんだとホッとした。
ふと久住さんを見ると訝しげな顔をして私を見ている。


「…久住さん?」

「……お前さ、今自分が置かれてる状況分かってんの?」

「え?」

「お前は今、記憶喪失なんだぞ。なんて言われて近付かれたのか知らねぇけど、人を簡単に信用すんなよ」

「で、でも知り合いだったんですよね…」

「それは結果論だろ?本当に知り合いかどうかその場で判断できねぇだろうが」

「それは、…そう、ですけど」