「ねぇ、蒼井さん」
「あー?」
この公園に来て10分程が経った。
麟くんが目を覚ます様子はなく、私たちの間には静かすぎる空気が流れていた。
蒼井さんは元々話す方ではないのか、私と麟くんがいるベンチの少し離れた所にあるベンチに座って退屈そうにスマホを弄っている。
「私の事、よく知ってるんですよね?」
「あぁ、まぁな」
空はすっかりオレンジ色に染まっていて、段々と暗くなっている気がした。
「私は一体、何者なんですか」
そう聞くと蒼井さんは顔を上げ、目が合った。
無表情で何を考えているのか分からない。
「………お前は、」
「ぅ、」
「っ、麟くん!」
蒼井さんが何かを言いかけた時、微かに麟くんの声が聞こえて急いで振り返ると痛そうに顔を歪めている麟くんと目が合った。