「……あの、どこまでついて来るつもりですか?」
特に何かを話すわけでもなく、ただ私の少し離れた後ろを歩いている蒼井さん。
「せっかくだから送ってやろうかと」
「結構です」
「だってお前記憶ねぇんだろ?危ねぇじゃん」
「ちょっと!」
少し離れている蒼井さんに駆け寄り思い切り睨んだのに、「ん?」とニッコリ呑気に笑顔を見せられた。
「それ、大きな声で言わないでください!誰にも言ってないんですから、」
「誰にもって、あの男は知ってたじゃん」
「それはっ」
「あ?何?もしかしてあの男の事好きなの?」
「はい?」
「ま、いいけど。今だけだろうし」
「…え?」
私より少し背の高い蒼井さんを見上げるように見る私に、蒼井さんは同じ目線になるように屈んでフッと笑った。
「お前がそうやって平和に明るく暮らして、お友達なんかも作って楽しく暮らせるのは今だけだ」
ニッコリと貼り付けたような笑顔だった。
目は笑っておらず真っ黒な目が真っ直ぐに私を捉えている。
この前感じたゾワリとした感覚がまた私を襲った。