「……嫌じゃないの?」
「なんで、嫌だと思うんですか?」
恭介くんは慎重な口調で、
「美春ちゃんに無理なことはしたくないし、させたくない。大事にしたい」
と、言う。
その言葉で。
本当に大切にされているんだなって。
きっとこれからも。
大切にしてくれるんだろうなって。
なぜかはわからないけれど。
強く確信した。
だから。
「無理じゃ……ないです」
夜空から、風が吹いた。
ふんわりと。
私の背中を押してくれるみたいに。
恭介くんは繋いだ手を離した。
(えっ……)
一瞬、心臓がひやっと冷めた。
(さすがに、嫌だった?)
こんなことを言うなんてって、引いた?
頭の中が真っ白になっていたら。
恭介くんが、両腕でぎゅうっと私を抱きしめた。
「!!」
「あんまりオレのこと、甘やかしちゃダメだよ」
その声で。
恭介くんは照れているんだって、私にも伝わった。