ふわっと、風が吹いた。

私の頬を優しく撫でていく。



「恭介くん」



私が呼ぶと、恭介くんは目を合わせてくれた。



(大丈夫、今なら言える)



気持ちを伝えることは、怖いことばかりじゃない。

きっとこの夜空を一緒に見上げることと同じくらいに。

大切で。

宝物みたいで。

尊いことなんだよ。



(頑張れ、私…………!)






「…………好き、です。恭介くん」



勇気を出して発した言葉は。

花火の音にかき消されたみたいで。



「ん? 何? ごめん、聞こえなかった」
と、恭介くんが私の顔に耳を寄せる。



私は恭介くんの耳にそっと片手を当てて。



「好き、恭介くん」
と、耳打ちした。




その瞬間。

夜空に花が咲いた。



パラパラ……と、火の粉が海に向かって落ちていく。



恭介くんがゆっくりとした動作で、私に向き直る。




「…………恭介くん?」



恭介くんは両手で顔を覆って、
「何それ、反則」
と、呟いた。



「えっ?」