その時、優里亜ちゃんがコホンと咳払いをした。
「誰も悪くないよね?」
「優里亜ちゃん……」
すると章二くんが、
「そうだよ。誰も悪くなんかない。オレは、美春が好きだけど、美春は笠松先輩が好き。……それだけのことだよ」
と言って、笑顔を見せてくれた。
「章二、アンタ良いこと言う時もあるよね」
優里亜ちゃんが章二くんの腕をバシンッと叩く。
「痛いから」
と、章二くんは腕をさすりつつ、
「でも本当にオレ、良いこと言うよな」
なんて言うから、優里亜ちゃんがケラケラ笑って「自分で言うな」と、ツッコミを入れた。
「……まぁ、だからさ。ちょっと態度悪くても、怒っているとかじゃないから」
私は頷く。
「いや、態度が悪いのはどうなのよ」
優里亜ちゃんがまだ笑っている。
章二くんもつられて笑い出し、
「いや、お前さっきから笑い過ぎだから。人の恋心、何だと思ってんの」
と、言った。