優しい人だなぁ。
スマートに気遣ってもらって、申し訳なさはあるけど、でも、安心する。
「ありがとうございます」
と、頭を下げた時に、私は彼の手にケガがあることに気づいた。
「……血、出てます。手のところ」
彼は「あぁ、平気です」と言ったけれど、私はそばに置いていた自分の鞄から絆創膏を取り出し、彼に差し出した。
「あ……、ありがとうございます」
彼は絆創膏を受け取り、
「可愛い絆創膏ですね」
と、呟いた。
それは子供の頃から馴染みのある、大人気キャラクターの絆創膏だった。
(あ、恥ずかしいかな!?)
高校生の男の子が貼るには少し幼稚な柄だったかもしれない、と慌てていると、
「使わせてもらいますね」
と、彼は笑顔を見せた。
その笑顔が爽やかで。
心から安心するような、やわらかいものだったから。
私の気持ちに何かが宿った。
風が吹いて。
私の頬を撫でていく。
甘くて、優しい、恋の香りがする。