「気になる人なんでしょう? 言わなくても顔にバッチリ書いてあるんだからね」
「……っ!」
思わず俯いてしまう。
「連絡先くらい聞いてくんの!」
優里亜ちゃんのどこか上機嫌な声に背中を押された気持ちになり、私は、
「行ってくる!」
と、彼を追いかけた。
彼は中庭の真ん中で、またイベントマップを見ていた。
妹さんはそばにいないみたい。
私は走って。
彼に近づいた。
「あ、あの!」
思い切って声をかけると、彼はこちらを見てくれる。
「ん? どうしたの?」
「わ、私のことを覚えていますか?」
あのスポーツドリンク、中身は全部飲んでしまったけれど、容器を洗って、今でも大切に取ってある。
だって、あれは。
目の前にいる彼との、唯一の思い出だったから。
「覚えているよ。あの日、オレのすり傷に気づいて、絆創膏くれたよね?」
「!!」