(甘やかしてもらっているのは、私のほうなのに)



そう言いかけて、やめた。



その代わりに。

私も恭介くんの背中に両腕を回して。

ぎゅうぎゅう抱きしめた。



想いの分だけ強く、抱きしめたかった。

この気持ち、全部恭介くんにあげたくて。



「あはっ、あはははっ」
と、恭介くんが笑い出した。



「美春ちゃんにぎゅうぎゅうされてるの、嬉しい」

「え、それでなんで笑うんですか?」

「うーん、わかんないかも。でも嬉しくって、楽しくなっちゃった」



そうなんだ?

だけど。

恭介くんが嬉しくて楽しいなら、私。

もっとそばにいるよ。




恭介くんがほんの少しだけ体を離して、私の顔を見た。



「オレね、勉強頑張るから。絶対に合格するから。そのために、美春ちゃんのパワーをもらうね」

「パワーですか? それってどうやって……」



……どうやってあげられるんですか?

と、言い終わらない内に。

恭介くんの顔が近づいてきたから、私は黙った。