待ち合わせは学校の最寄り駅から二駅ほど私の家とは反対側に離れた、やや都会的な繁華街の一角にある、ホテル街。

日が暮れても賑わうこの場所は、自然豊かな学校周辺とは随分空気が違っている。



コインロッカーに荷物を置いて、制服から着替えて、あれから毎日付けているリップをクレンジングした。


“あの人”はきっと、女子高生のすっぴん感が好きだから。


「アヤちゃん、久しぶり」


五十代半ば、父親でもおかしくない年齢の男が、ワンピース姿の私に薄ら笑いで近寄ってくる。


「――お久しぶりです」


きっとこの人にウケがいい、できるだけのあどけなさを残して笑い返すと彼は私の肩に手を置き、引き寄せて約束のホテルへと歩き出す。



 ――『スマホの中身って、その人の全てが詰まってて好きよ、俺』



脳内であいつの言葉が木霊した。