柊くんの唇に()の唇が重なる。

――あの日嗅いだ柔軟剤の香り。知っているような気がしたのは何故だっただろう。






夕暮れの中庭、人気のないその場所で、

柊くんに触れられながら、

昼間人で賑わう噴水の向こう、

見せつけるみたいに柊くんの首に腕を回して、

思惑通りみたいにその視界に私を捕らえ、

私にキスした時みたいに口元に緩く弧を描き、

まるで女みたいな表情(かお)をして、




悪魔(にかわくん)が笑う。






 “ばーか”




意地悪な瞳。
口パクで告げられたその言葉に、その場から一歩も動くことができなかった。