七限目の体育を終え、少し遅れた帰りのホームルームを行う。
男子の更衣室として使われた教室は汗拭きシートの匂いがした。
バレーボールをして膝を擦ったため、絆創膏を貼って明日の連絡を聞き、スケジュール帳に書き込む。

みんなは早く帰りたそうにしているが、私は柊くんを待つため、ホームルームが早く終わってもどうせ早く帰れない。

対角線上にいる弐川くんと目が合った。
不自然にならない程度に視線を外し、スケジュール帳に目を落とす。

その間も見られているようで何だか心が落ち着かなかった。

弐川くんは私の心を搔き乱す。それは決して恋のドキドキとかそういうものではなくて、殺人鬼に狙われているような恐怖心。
何をし出すか分からない、何を考えているのか分からない、掴みどころのない、予測不能の相手と関わるのは、私にとってとても疲れることだった。

同じクラスである以上行事ごとで関わることにはなるだろうが、やはり友達としてでも仲良くなることは避けよう。というかあんなことをされて友達になろうなんてもう無理だ。いくら柊くんの友達でも。

そこまで考えて、自分に弐川くんと友達になろうという意思が少しでもあったことに驚いた。
何故?柊くんの友達だから?いや、違う。

ああ、そうか、私は一人ぼっちだから、暇だったから。クラスの人間をよく見ていたから。





一際目立つ友達の多い弐川くんを見て、――ずっと寂しそうだと思っていた。